知的書評競技「ビブリオバトル」に参加することになった記念?に、ビブリオバトルのブログを立ち上げることにしました。バトルの様子や、紹介した本などを掲載していきたいと思います。
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風をつかまえた少年

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「マラウイ」という国をご存じでしょうか?

おそらく知っている方は少ないと思いますし、私自身も本書で初めて知りました。

アフリカの最貧国ともいわれる、小さな国です。

マラウイでは、今でも干ばつなどで飢饉となり、実際に餓死する人もいます。

電気は通っているところはあるものの、裕福な人でないと使えないくらい高価で、しょっちゅう停電します。

そのうえ、いまだに病気を治すのに魔術師が存在するという国です。

そんな国で、たった一人で風力発電を作り、国際会議にまで出ることになった当時14歳のウィリアム少年の自伝的な物語が本書では語られています。

そう、少年自身の言葉によって。

貧しくて学校を中退したウィリアム少年は、NPO法人が設立した無料の図書館に入り浸ります。

そこで見つけた大きな風車の表紙の本――風力発電の本。

「風力発電で電気を起こせば、家族も村も、裕福に暮らせるに違いない」

そう確信したウィリアム少年は、図書館で電気や物理の本を読みあさり、廃品などから風力発電を作ろうとします。

時にはバカにされ、時には危ない目にあいながらも。

バカにしていた村人たちの目の前で、風力発電を起動し、電球を点けます。

魔術ではない、彼自身が自然を利用した科学の灯を。

そして噂は広まり、彼は国際会議の舞台に立つまでになります。

これだけ聞けば、単なるサクセス・ストーリーに思えるかもしれません。

ですが、本書でポイントとなるのは私は「本の力」だと思います。

先に上げたように、ウィリアム少年は1冊の本との出会いから、風力発電を自作することを決意しました。

知への探求心、そこには国も身分も関係ありません。

そして、もう一つの「本の力」いや「活字の力」と言ってもよいのは、本書自身のリアリティさです。

マラウイは飢饉で人が死ぬような国です。

そういった映像やニュースはいくらでも見ることもできますし、それはそれでリアリティがあります。

しかし、そういった映像はあくまでも「外から」見た物でしかありません。

しかし「当事者」が書かれたものであれば、それは「内から」みたものになります。

本書は協力者がいるとはいえ、ウィリアム少年本人の言葉で綴られています。

決して高尚な文章ではありません。むしろ淡々としているところもあります。

それが余計にリアルです。

例えば「飢饉で友人が飢え死にした」などということも、普通に登場します。

口減らしで姉が駆け落ちして家を出ていくことも。

配布される食料を大人達が奪い合う様も。

大統領が国民の生活をこれっぽっちも考えていないことも。

無邪気なくらいに書かれています。

そこには、当事者が内から発する「言葉の力」を感じます。

そしてそれは、どんな映像よりも真実を語っています。

それも本書の魅力と私は感じました。

末尾に池上彰さんの解説もありますが、ここでも知の力・教育の大事さについて触れられています。

そういった意味でも、本書は大人だけでなく、中学生以上くらいの方にも読んでいただきたい本だと思いました。

【補足】
もうウィリアム少年も今では大人になっていますが、彼のWebサイトも存在します→William Kamkwamba Official Blog
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